なぜ腰痛を治すのに、筋肉がポイントになるのか?
ここで、「筋肉に着目すること」について、前記事よりさらに深掘りして、それがいかに大切か、説明したいと思います。
以下のポイントがあります
- 腰痛の病名はいくつもあるが、全てに共通するのは、「筋肉の異常」だから
- 「筋肉が硬い」と、痛みをもたらしやすいから
- 慢性腰痛の場合、骨やヘルニアの状態が元通りになることは難しいから
- たとえ元通りになったとしても、痛みが増すことさえあるから
- 手術は、かえって痛みが増す危険性があるから
- 手術すると、整体が受けられなくなる、などのデメリットもあるから
- 腰痛の病名はいくつもあるが、全てに共通するのは、「筋肉の異常」だから
腰痛には、いろいろな病名(症状名)があります。ヘルニア、すべり症、分離症、脊柱管狭窄症などなど・・・
それらは、主に整形外科で診断されます。レントゲンやMRIを使って画像から判断し、そのような症状名となるわけです。
もちろん、つけられた病名は正しいでしょう。痛みを引き起こしているひとつの原因を特定していることはたしかです。
しかし、それが全てであり、根本原因であるかというと、そうではありません。あくまで、「痛みの原因のひとつ」にすぎないのです。
ヘルニアや分離症、すべり症でも腰が痛くならない人が多い
ヘルニアやすべり症、分離症などが痛みの根本原因ではない、その理由を説明しましょう。
よく、腰痛を取り上げたテレビ番組で、「レントゲンでは明らかに腰まわりに骨折がある様子が映っているのに、本人は腰の痛みを全く感じていない」というような例を取り上げていますね。
このことからわかるとおり・・・
骨が折れたからといって、骨自身が痛みを発するわけではないのです。
たとえば、骨の手術のとき、骨に穴をあけてそこに金属を埋め込むのですが、骨自体から痛みを感じるのであれば、骨に穴を開けるなどということは到底、できないはずです。麻酔を骨に注入させることも無理です。
このことから考えても、骨そのものが痛みの原因ではないことがわかります。
へルニアも、腰痛の根本原因ではない?
では、ヘルニアはどうでしょうか?ヘルニアは、神経が圧迫されることで痛みが生じると言われている症状です。
たしかに、レントゲンやMRI画像で見る限り、椎間板が神経を圧迫している様子が見て取れます。
しかし、ヘルニアも同様に、画像ではそのような状態でも、痛みが全くないという人が数多くいます。それもそのはずで、神経が圧迫された場合、生じるのは痛みではなく麻痺です。
つまり、腰に感覚を感じなくなるはずなのです。
にもかかわらず、ただ痛みがあるだけで、感覚はあるというのは、とてもおかしな話なのです。つまり、レントゲン画像などで神経を圧迫しているように見えるのは、実は本当の意味で圧迫しているわけではないのです。
神経に触れている程度であり、腰や足の機能には影響を及ぼさないレベルのものなのです。
腰椎すべり症も、腰痛の根本原因ではない?
また、すべり症などの、骨のズレに関してもそうです。
骨がズレている場合、レントゲンではその様子がはっきりと映ります。なので、腰の痛みもそれが原因に違いない、と判断されがちなのですが、これも間違いです。
よく、プロ野球の投手が、長年、変化球を投げ続けてきたために、指が変形している様子が紹介されますよね?
しかし、そういう選手は、指に痛みない、と自分で言っています。もし、骨が変形したりズレたりすれば、かならず痛みが生じる、というのであれば、これはとてもおかしな話です。つまり、骨の変形、ズレは、痛みを生じさせるものではないことがわかります。
では、なぜ腰に痛みが生じるのでしょうか?
それがまさに、「筋肉の状態が悪くなるから」です。
「筋肉の状態が悪い」とはどういう状態なの?
「筋肉の状態が悪くなる」とは、
- 筋肉が硬くなる
- 筋膜と筋肉がくっついてしまっている
- 筋肉の血流がよくない
という状態です。それらをよくしていけば、腰痛はなくなります。
筋肉というものは、意外と知られていませんが、体を動かす役割の他に、実は「体を支える」役割もあります。
つまり、普通に考えれば、体を支えるのは骨だけだと思ってしまうところですが、実際は、筋肉も体を支えているのです。特に、腰まわりの筋肉はその役割の割合が大きいと言われています。
だからこそ、「腰椎が折れたりズレたりしていても、全然痛くない」という人が多くいるのです。筋肉が腰を支えている、つまり骨のかわりをしているのです。
筋肉が骨のかわりに腰を支えるんだけど・・・
しかしながら、「筋肉が腰を支えるから、全く問題ないのか?」というと、そうではありません。やはり、骨が折れたり、ズレたりしていることは、生まれながらの人間の体からすれば、異常が起きている状態です。
ですから、場合によっては、その異常を体が過剰に感じ取り、その結果、腰まわりの筋肉を極端に硬くするといった形で体を防御することもあります。
この「防御のため筋肉が硬くなった状態」こそが、「腰の痛み」となるのです。つまり、痛みの原因のひとつに、「骨の異常、ヘルニア」などがあるのですが、その原因が生まれたために起こった「筋肉の異常」これこそが、痛みの「正体」なのです。
だからこそ、「原因」である骨のズレなどを手術で元どおりにしても、痛みが消えないケースが出てくるのです(筋肉の硬さは戻らないから)。
やはり、注目すべきは、「原因」ではなく、「正体」の方です。「正体」をはっきりと認識し、それを改善していくことができれば、痛みはなくなります。まさに単純な話です。「正体」が改善されたのですから、痛みがなくなるのは、ごく当然の話なのです。
「筋肉が硬い」と、痛みをもたらしやすい
「筋肉が硬いと痛みをもたらしやすい」――このことは、簡単に想像できます。
プロレスの関節技を思い出してください。これは、筋肉を引っ張ることで相手に痛みを与える技です。なぜ引っ張られるかというと、それ以上筋肉が伸びないからです。
伸びないということは、遊びが全くないということになります。ゴムでもそうですが、硬いゴムは遊びがありません。
しかし、柔らかいゴムなら、たっぷりと遊びがあります。ですので、プロレスの関節技も、筋肉が柔らかくて遊びがある選手には効きにくいのです。
これと同じことが腰痛の場合は起きているのです。
つまり、腰まわりの筋肉が硬いために遊びが少ない状態なのです。なので、少し腰を動かしただけで、筋肉がひっぱられてまるでプロレスの関節技をかけられたかのような状況になり、痛みが走るのです。
さらに、ここで見逃せないのは、筋肉が引っ張られた場合は、筋肉の中の血流が悪くなるということです。これは当然の話で、たとえばストローの両端を思いっきり引っ張ってみてください。ストローの中が狭くなってしまいます。これでは、ジュースも通らないストローになってしまいます。
これと同じように、筋肉が引っ張られることによって、筋肉の中の血管が狭くなり、血流が悪くなるのです。血流が悪くなると、当然、炎症などの異常が筋肉に起こります。
そういう生活習慣を続けていれば、炎症が慢性化し、ますます治りにくくなるのです。
なので、筋肉の状態をよくすること、とりわけ、柔らかくしていくことは、腰痛解消においてとても重要なことなのです。
慢性腰痛の場合、骨やヘルニアの状態が元通りになることは難しい
腰痛を完治させる上で、筋肉に着目していくことが大切だと述べました。しかし、一方で、こういう反対意見もあると思います。「どうせなら筋肉だけでなく、骨折や骨のズレ、ヘルニアも元どおりにすればいいじゃないか」と。
しかし、まず大前提として押さえておくべきことは、「慢性腰痛の場合、骨折、骨のズレ、ヘルニアは完全に発症前の状態に戻るのは難しい」ということです。
これがもし急性ならば、ギプスで固定すれば、自然と元通りの骨の状態になります。ギプスでだめだったとしても、整体師さんの手技で元通りになる可能性も高いです。
しかし、慢性化してしまったらそう簡単にはいきません。骨が元通りになりにくいのはもちろん、まわりの筋肉や組織の状態も「骨に異常がある状態」を完全にカバーしている体勢に入っています。
なので、ある意味、「骨に異常がある状態」で安定してしまっているのです。
その状態から、ギプスや整体師さんの手技で元通りにするのは非情に難しいのです。なにせ、安定していますから、いくら整体師さんが手技で頑張って骨をつなげようとしても、体が抵抗してしまうのです。
もちろん、「手術で強引に骨を元通りにする」という手もあるでしょう。
しかし、慢性化した場合、手術で元通りにすることは、かえって、腰周りの筋肉や組織を不安定な状態にすることになります。なので、せっかく骨を手術でつなげたのに、痛みがかえって増した、ということさえ頻繁に起こるのです。
そもそも・・・
手術で元通りにするといっても、金属で骨をつなげるわけです。つまり体の中に異物が入ることになります。また、つなげた状態は、単につなげるだけではなくて固定しますから、可動域が狭まります。
また、金属が骨につけられて固定している人の場合、整体師さんの施術がやりにくくなります。ですので、施術を断られることもしばしばあります。
つまり、骨の状態を元に戻そうとする労力がかなりかかる上に、得られるメリットが少ないのです。いや、少ないどころか、元に戻す前よりも痛みが増す場合すらあります。
なので、腰痛が慢性化してしまった人の場合、骨に着目するのではなく、あくまで筋肉に着目して治療するのが最も望ましいのです。
次の記事からは、いよいよ、「患者先行型治療」の具体的内容に入っていきます。
治療には3ヶ月かかるのですが、まずは最初の1ヶ月目からの説明をしますね。